2026年6月30日、当協会のメディアパートナーであるRoomClipの配信番組「RoomClipライブ」にて、『主要プレーヤーと語る、スマートホームの「いま」と「次」。』と題したイベントを開催しました。本イベントでは、一般ユーザーおよびRoomClipユーザーを対象としたスマートホームに関するWEB調査・投稿キャンペーンの結果報告に加え、各プレイヤーの最新動向の共有やディスカッションを行いました。今回はその模様をレポートします。
スマートホームの普及状況とユーザー意識の現在地
セミナーの冒頭では、ルームクリップと当協会による最新の調査結果をもとに、スマートホームの現状と課題について報告しました。
前回、両社合同で一般ユーザーを対象に行った2023年の調査では、一般ユーザーのスマート家電(スマートホームデバイス含む家電)の所有率は約13%、対してRoomClipユーザーは約48%という結果でした。そこから約3年での変化を探った結果、以下のような主なポイントが見えてきました。(2023年の調査レポートはこちら)
スマートホームは普及フェーズに

一般向け調査では、認知・導入経験が15%を超え、普及の壁と言われる「キャズム」(16%)を越えて一般層(アーリーマジョリティ)へ拡大するフェーズに移行しつつある傾向が見えました。
さらに、スマホアプリで操作設定できるスマート家電(エアコン、冷蔵庫、テレビなど)やスマート住設(無線LAN給湯器など)まで対象を広げると、「使用経験あり」の割合は一般層で24%、RoomClipユーザーで53%にのぼります。ユーザーが「スマートホーム機器を使っている」と自覚していなくても、実際には利用している割合が高いことがうかがえます。認知・導入はこの3年で緩やかながらも、確実に普及に向けて進んでいると言えるでしょう。

アカウント登録や初期設定は、依然として導入時の課題

導入に対する課題について、一般層では「アカウント登録の手間」や「価格」が最大のボトルネックとなっています。一方で、先行して利用しているRoomClipユーザー層では「メーカー間の連携の難しさ」や「機能を使いこなせない」など、実用段階特有の課題が目立ちました。
しかし、近年はアプリ設定のUXが向上し、チュートリアルで簡単に設定が進められるよう工夫されたプロダクトが充実し、実際のハードルは解消されつつあります。また、スマートホームのグローバル規格「Matter」の登場により、スマートホームデバイスだけでなく、家電や住宅設備、Wi-Fiルーターなど幅広く対応機器が増えれば、スマートフォンのOSを問わずQRコードを読み込むだけなどより簡単に接続できるようになります。今後、これらの課題はさらにスピーディな解決が期待されます。
なお、RoomClipユーザーのアンケート回答者は40〜50代女性のファミリー層が約8割を占めています。スマートホームはもはや「ガジェット好きの男性」だけのものではなくなり、市民権を得始めていると言えそうです。
参考)Matter関連記事
「Matter(マター)」とは何か|スマートホーム/IoTのグローバル標準規格を徹底解説
PRTIMESストーリー
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/57987?tab=story
スマート化がライフスタイルに進化しつつあるユーザーのトレンド変化

当協会とルームクリップが共同で実施した投稿キャンペーン「わが家のスマート○○」では、ユーザーの関心の変化が見てとれました。以前は「ガジェットとしての楽しさ」や「機器自体の紹介」が中心でしたが、現在は「インテリアの一部として自然に溶け込ませる工夫」や、「センサーや条件設定を活用して『日常の細かな家事(ちりつも家事)』を自動化し、QOL(生活の質)を向上させる」ことなど具体的に生活に役立てる用途へと関心がシフトしています。スマートホーム化がライフスタイルの一つとして確立しつつある様子がうかがえます。
スマートホーム主要プレイヤー各社の取り組み
続いて、一般ユーザー向けスマートホーム市場を牽引する4社が、それぞれの製品戦略やユースケースを解説しました。
ユーザーの「ちりつも家事」をAlexaで解消してウェルビーイングを実現

日本のスマートホームを牽引する、スマートスピーカーAmazon Echoでおなじみのアマゾンジャパンから、Echo・Smarthome事業部 事業部長 丸山舞氏から説明が日常の些細な「ちりつも家事」の負担軽減を音声操作だけでなく、咳や赤ちゃんの泣き声などのセンサー検知による自動化環境を推進しています。
また、2022年に日本に上陸した見守りカメラやスマートドアベルを展開するRingは、日本の住宅事情にあわせて、2線式配線に対応した日本独自の新製品を展開しています。(新製品発表会の模様はこちら)
日本の住まいにあわせた小型ローカライズが大ヒットしたnewルンバ

アイロボットジャパン マーケティングコミュニケーション部 部長の望月陽二郎氏からは、大ヒット中の日本市場向け小型・薄型モデル「Roomba Mini」の紹介がありました。「広い家でしか使えない」という偏見を払拭し、機能をあえてシンプルに追求。発売直後は様々な家電量販店で入手困難になるほどだったそうです。
ルンバは、製品登録時に、「名前を付ける」プロセスが組み込まれています。これにより、ルンバを迎えた家族は、家族会議を開いて名前を付けることも多く、家族の一員として愛着が生まれる背景となっているそうです。そういった傾向もあり、従来のユーザーコミュニケーションからは一線を画し、機能価値から生活価値への訴求として、ユーザーフレンドリーで愛着や親近感がわくような新しいプロモーションでアプローチしているとのことでした。
スイッチボット

SwitchBotからは、Business Development Manager&ProductManagerの北島祥氏が、同社の取り組みや視点について紹介しました。工具・工事不要の「後付け」で家全体を網羅できる拡張性の高いエコシステムとして、現在70SKUを超えるラインナップを持っています。もともと、人の代わりをロボットに委ね、もっとやりたいことに時間を使えるようにという思想で、自分の代わりに壁のスイッチを押してくれるbot(いわゆる指ロボット)が最初のプロダクトとしてスタートしたブランドです。
最近では、プライバシーに配慮し、カメラ映像をローカル環境でテキスト化して処理するAIハブの導入や、さらに人に寄り添えるテクノロジーとして、KATAフレンズ(「AIパートナー」ペット型ロボット)、さらにインテリアに馴染む木目調デザインのデバイスなど、人に寄り添う「ぬくもりデジタル」の展開を進めています。
スマートロックNature

スマートリモコンを累計70万台以上販売しているNatureからは、マーケティング/データサイエンティストの中間隆晃氏が登壇。同社は、スマートホームの本質を「エネルギーマネジメント」と捉え、スマートリモコンやHEMSデバイスを通じた再エネの需給調整ソリューションを提供しています。
先日発表された新製品のスマートロック「Nature Lock/Key」、ロックの状態を把握して在宅確認を行い、エネルギーマネジメントに繋げる狙いで市場参入を果たしました。ユーザーヒアリングを徹底し、Appleの「探す(Find My)」機能に対応させることで、子育て世代の「子どもへの鍵の紛失防止」や「緩やかな見守り」といった明確なニーズに応えています。
一般ユーザーの調査でも、RoomClipユーザーへの調査でも、スマートロックのニーズが非常に高まっている今、Nature Lockの反響が期待されます。
ディスカッション|ユーザー調査やRoomClipユーザーの投稿を見て、トッププレイヤーは何を感じたか?

セミナー後半のパネルディスカッションでは、以下のポイントについて意見が交わされました。
- ユーザー主導の課題解決:
- 暮らしを良くするためのDIYが流行しているように、ユーザー自身が試行錯誤しながらQOLを上げていこうとする前向きな雰囲気が投稿から伝わってきた。
- 多様な世帯へのアプローチ:
- 高齢者、独居世帯、共働き世帯など、多様化するライフスタイルの助けになるユースケースをもっと広める必要がある。
- 「自動化」のその先へ:
- 今はまだ「設定に課題を感じる」段階だが、最終的には「ユーザーが指示しなくても、家が自然とサポートしてくれる」状態へと進化していくのが理想。
- 何かを自動化したり、任意に連携・連動させたりする「スマートホーム」という言葉は、掃除をなくしたり、ちりつも家事をなくしていくと、概念自体が変わっていくのかもしれない。
- マジョリティ層への普及の壁:
- アーリーアダプターは「できること自体が楽しい」が、一般層(マジョリティ層)には「強力な悩み解決のモチベーション」が必要。RoomClipユーザーの実例を紹介することで、課題解決や価値創出のヒントを伝え、裾野を広げられる可能性を感じた。
- 普及の鍵は「インフラ化」「デザイン」「AI」:
- インフラ化: マジョリティ層は自ら機器を買い集めないため、最初から住宅に組み込まれている(標準実装される)ことが真の普及につながる。
- デザイン: ガジェット好きだけでなく、インテリア好きが手に取りやすい「空間に馴染むデザインや素材感」が重要。RoomClipの投稿でも「スマート照明」が一気に伸びたのは、意匠照明と組み合わせて、自分好みの環境が作れるような選択肢が増えたことが要因と考えられる。
- AI: 日常的にAIを利用する人が増える中、AIによってスマートホームの利便性が飛躍的に向上すれば、普及を後押しする強い力になる。今回の一般調査で、「AIを日常的に使っているか」という質問に対して約6割が「使っている」と回答。AIを日常的に使っているユーザーは、AIによるメリットを体感して理解しているため、スマートホームにAIが実装されるとメリットを理解してユーザーになる可能性が高まるのではないか
まとめ|一般ユーザーのスマートホーム普及に向けて
LIVING TECH協会は、「人々の暮らしを、テクノロジーで豊かにする。」というミッションのもと、住まいと暮らしに軸足を置いてスマートホームの普及推進活動を行っています。
ディスカッションでも「住宅実装のインフラ化」が議論されましたが、住宅業界はテクノロジー業界とは構造が異なり、中小規模のビルダーや工務店が多数を占めています。職人不足や資材高騰などの課題もあり、最新情報をインプットする余裕がない企業も多いため、業界全体が導入しやすい仕組みづくりが急務です。そのための取り組みにも着手しています。
現在はWi-Fi対応の住宅設備が増え、スマートホーム導入のインフラは整いつつあります。スマホというインフラが広く普及している今、大多数の人がスマートホームを実現できる環境にあります。当協会は、本日のディスカッションで得られた知見を活かし、展示会での体験デモや公式サイトでの情報発信、メディアパートナーであるRoomClip様との連携を通じて、一般ユーザーが「一歩を踏み出せる」ような啓蒙活動を今後も続けてまいります。共に活動してくださる企業や団体、自治体など、随時募集しております。
また、本年8月と12月に開催されるJAPAN BUILDという建築・不動産業界における展示会において、LIVING TECHカンファレンスを開催します。その中に、今回のセミナーをもとに、今後のスマートホームビジネスについて考えるセッションも企画しております。大阪展においては8月29日(金)14:30~15:30のセミナーで、セミナー後に無料交流会も含め開催しますので、是非みなさまお越しください。

今回のセミナーの続編となるセミナー
【SBH-10】1万人調査で判明!スマートホームのユーザーニーズ最前線~ユーザーのリアルから紐解くスマートホームビジネスの新提案戦略とは~ 2026/8/28(金) 14:30~15:30
なお、期間限定で今回のセミナーのアーカイブ動画を公開しています。当日ご参加がかなわなかった皆様は、是非お見逃しなく!
