会議の議事録作成、商談後の言質確認、そしてふと思いついたアイデアのメモ。ビジネスマンは日々、膨大な「言葉」を処理することに時間を奪われています。
「もし、すべての会話が自動で、しかも完璧に記録・要約・構造化されたら?」
そんな願望を現実のものにするデバイスとして、約2年前に登場した前作で大きな話題を呼んだPlaud Noteが、プロフェッショナル仕様の「Plaud Note Pro」へと進化しました。
今回は実機を入手し、静かな会議室だけでなく、騒音の激しいカフェや屋外テラス、iPhoneでの通話録音、さらには複雑な技術会議での論理構造化まで、あらゆるシチュエーションで検証を行いました。
結論から言えば、これは単なる録音機ではなく、「会話の空気感」や「論理」までを可視化する、ビジネスの強力な外部脳。
加えて、会議メモをChatGPTやGeminiのような生成AIで処理するものとは、手間が大幅に削減され、精度も上がり、アウトプットの形もより柔軟なものにできます。
そんな「Plaud Note Pro」について、実際の使用感を交えて詳細にレビューします。
この記事は、Plaud Note Pro製品発表会での取材、およびメーカーより実機を提供いただき記事執筆を行なっております。


デザインとハードウェア:極薄設計
まずは外観と基本スペックから見ていきましょう。Plaud Note Proの最大の特徴は、その圧倒的な薄さにあります。
クレジットカード2枚分の「薄さ」と、MagSafe対応

本体の厚さはわずか2.99mm。手に持った感覚は、クレジットカードを2枚重ねた状態とほぼ変わりません。

筐体には航空機グレードのアルミ合金が採用されており、ひんやりとした金属の質感と高い剛性を兼ね備えています。
注意点として、本機はMagSafe対応を謳っていますが、本体そのものに磁石が内蔵されているわけではありません。
iPhoneの背面に装着して使用するためには、専用のMagSafeケースに入れるか、付属のマグネットシートを使用する必要があります。

そのため、専用ケースをつけることで若干の厚みと嵩張りは生じますが、本体が極薄なこともあってそこまで違和感が感じることはありません。

従来のボイスレコーダーを持ち歩く手間に比べれば圧倒的にスマートです。

スマホと一体化して持ち運べるため、「カバンから取り出す」動作が不要になり、スマホをデスクに置いた瞬間、そこはすでに録音スタジオになります。
待望の有機ELディスプレイと「配慮」の設計
前作からのハードウェア的な大きな進化点は、本体下部に搭載された0.95インチのAMOLED(有機EL)ディスプレイです。

バッテリー残量、ストレージ容量(64GB)、録音モードなどが一目で確認できます。
前作ユーザーの悩みであった「今、録音できているのか?」「電池はあるか?」という不安はしっかり解消されています。
また、ビジネスシーンでの使い勝手も改善されており、小さなドット(点)が表示されるのみで、録音中であることが相手にわかりにくいように配慮されています。
これにより、対面の相手に「録音されています」という威圧感を与えず、あくまで自然に記録を行うことができます。
物理スイッチ廃止と「スマートデュアルモード」
操作系も進化しました。「スマートデュアルモード」により、通常録音か通話録音かを、デバイスが状況に応じて判断します(手動切り替えも可能)。
前作にあった物理的なモード切替スイッチが廃止され、自動切り替えがされるようになっているのが大変便利です。


「急な電話対応でスイッチを切り替え忘れて無音だった」というミスが構造的に起きない設計になっており、とっさの場面での対応力が格段に向上しています。
録音性能と音質検証:ノイズを消し、感情まで拾う
Plaud Note Proの真価は、高性能MEMS(※)を4基、AI音声処理チップ、そして振動センサー(VPU)を組み合わせた録音システムにあります。
(※)MEMSとは:微小電気機械システム技術を応用した、超小型・高性能なマイク
【検証1】騒音・屋外テラスでの実力(AIノイズキャンセリング)

今回の検証で最も驚かされたのが、悪条件下での録音性能です。
BGMが流れ、周囲の話し声や食器の音が響くカフェ、さらには風のある屋外のテラス席で会話を録音してみました。
通常、屋外での録音は風切り音(ボボボという音)が入ってしまい、音声が聞き取れなくなることが多々あります。
しかし、Plaud Note Proは違いました。再生データを確認すると、風切り音や周囲のガヤガヤとした騒音がほとんどカットされ、話し手の声だけがクリアに浮き上がって聞こえます。
誇張抜きに静かな個室で話しているかのような音質でした。これは、マイクハードウェアの指向性と、最大-45dBのノイズ低減を実現するAIモジュールの連携によるものと考えます。
これなら、移動中の屋外や、オープンスペースでの打ち合わせでも、安心して記録を任せられます。
【検証2】iPhone・LINE通話の録音

iPhoneユーザー長年の課題である「通話録音」も、本機なら解決します。
搭載されたVPU(振動伝導センサー)が、スマホ内部の振動を直接キャッチして音声化します。
通常の電話回線はもちろん、LINE通話やMessenger通話でもテストを行いましたが、相手の声も自分の声も非常に鮮明に記録されていました。
特にLINE通話が手軽に録音されるのは嬉しいポイントですね。
【検証3】数字・定量データの正確性
ビジネス会話において、数字の聞き間違いは許されません。
YouTubeのビジネス会議動画(登録者数、視聴率、デバイス分布などの数値が多出するもの)を録音させてみました。

結果、生成されたテキストには、それらの細かい数字も、正確に反映されていました。聞き取りづらい部分では誤差があったものの、基本的には数字が曖昧になることがなく、「定量データ」として記録が残っていました。
アプリとAI機能:チャットAIにはできない「編集体験」
録音データは専用アプリに転送され、OpenAIの最新LLMによって処理されます。
ここで強調したいのは、単に「文字起こしができる」ことではなく、「PLAUDアプリそのものが、極めて優秀なエディタである」という点です。
一般的な生成AIとの決定的な違い
通常、ChatGPTなどのチャット形式の生成AIに音声データを読み込ませて議事録を作る場合、出力結果はあくまで「チャットの吹き出し」の中にあります。
「ここを少し修正したい」「ここに補足メモを入れたい」と思っても、その場で直接編集することは難しく、結局テキストエディタやWord・Excelなどの別ツールにコピペして整形する手間が発生します。
しかし、PLAUDのアプリは違います。AIが生成した要約結果は、編集可能な「ドキュメント」として表示されます。
- 柔軟な追記・修正: AIが作った要約の行間に、自分の手で補足メモを書き足すことができます。
- マルチメディア統合: 会議中に撮影したホワイトボードの写真や資料画像を、テキストの合間にドラッグ&ドロップ感覚で挿入できます。
- 見出し・強調: 重要な部分を太字にしたり、見出しを付けたりといった整形も自由自在。


つまり、録音から編集、完成までが一つのアプリ内で完結します。
結局、どんなに生成AIが進化しようとも誤差や認識のズレは起こりがちです。最終的には人間の手で加工編集をする必要がありますが、AIが作った下書きを人間がその場で完成形に持っていけるという点は、利用した中で最も良い点に感じました。
「感情」と「ムード」の可視化
今回の検証で見つけたユニークな機能が、話者の感情やムードの分析です。

「話者はこの提案に対して前向きであった」
「懸念点については慎重なトーンで語られた」
といった、その場の雰囲気や感情のニュアンスまでが反映されていました。
会議の参加者が議事録を観るときはもちろん、参加していない人が議事録を見ても会議の温度感や臨場感をイメージすることができます。
テンプレート機能
Plaud Note Proには「会議」「講義」「インタビュー」など多様なテンプレートが用意されています。
テンプレートの種類


アプリに記載の通り、さまざまなパターンがあります。
Todoや要約のみならず、「会議秘書」や「名言」「スピーチ」、要約にも適応型から詳細、推論要約といったテンプレートまで様々あることは大きな特徴です。そのプロンプトをわざわざ考える必要がありません。
特に「推論の要約」が面白い機能と感じたので、次の章で特記します。
技術的な会議で真価を発揮する「推論の要約」
利用していて特筆すべき点に感じたのは、難易度の高い会議に対応する「推論」機能です。
筆者はエンジニアとして業務をすることもありますが、エンジニアリングのトラブルシューティングや、複雑なプロジェクトの会議では、会話が錯綜しがちです。
「何が起きて(事象)」「なぜ起きて(原因)」「どうするか(対策)」が、会話の中でバラバラに語られることが多いため、単純な要約では意味が通じないことがあります。
Plaudの「推論要約」は、こうした複雑な会話からAIが論理を推論し、以下のように構造化して整理してくれていました。
具体的な内容はここでは書けないですが、サンプルとして以下のようなイメージです。
- 【事象】: サーバーAにおいてレスポンス遅延が発生。
- 【原因】: 特定のクエリによるDB負荷の上昇(AIが会話の断片から特定)。
- 【対応策】: インデックスの再構築と、キャッシュ設定の見直し(具体的なアクションプランとして明示)。
このように、人間が後から整理しようとすると数時間かかるようなロジックの組み立てを、AIが自動で行ってくれます。
単に「誰が何を言ったか」だけでなく、「結局どういう論理だったのか」までを整理してくれる機能は、画期的に感じました。
マインドマップ機能
議論の構造を視覚化する「マインドマップ」の自動生成機能も搭載されています。
ブレインストーミングやアイデア出しの会議など、話が多岐にわたる場合には全体像を掴むのに役立ちます。
一方で、長時間にわたる詳細な会議では情報量が膨大になるため、実務的には「ノート機能(上記の要約やテンプレート、Todoリスト)」を利用する頻度が高くなるでしょう。シーンに応じた使い分けが可能です。

導入前に知っておくべき留意点と使い分け
完璧に見えるPlaud Note Proですが、構造上の「得意・不得意」は存在します。ここを理解して使い分けることが重要です。
オンライン会議(Teams/Zoom)での制限
最も注意すべき点は、「PCで行うオンライン会議の録音には向かない」ということです。
本機の通話録音(VPU)は、物理的な振動を拾う仕組みです。PCでイヤホンをしてWeb会議をする場合、振動が発生しないため、相手の声は録音されません。
(スマホを受話器のように耳に当てて通話するスタイルなら録音可能でしたが、Web会議では稀なケースでしょう)。
- オンライン会議:TeamsやZoomの録音機能、PC内蔵のAIツールを使用する。
- 対面会議・電話・スマホ通話:Plaud Note Proを使用する。
このように、「オフライン(対面・電話)」専用のデバイスとして割り切って運用するのが正解です。
ただ、オフラインや電話の際に精度高く集音でき、かつ生成AIと掛け合わせられるボイスレコーダーは限られるので、Plaud Note Proは貴重なデバイスです。
文字起こし精度の過信は禁物
前作より精度は向上していますが、AIによる「全文書き起こし(生ログ)」には、専門用語の誤変換などが含まれる場合があります。
しかし、Plaudの強みは「ノート機能」にあると感じています。たとえ生ログに多少の間違いがあっても、高性能なLLMが文脈を理解し、「要約ノート」の方は極めて正確な内容で生成されます。
日常的には要約だけを確認し、詳細なニュアンス(例えば数字の確認や、感情のトーンなど)を知りたい時だけ、生ログから該当箇所の音声を再生する。この使い方が最も効率的です。
充電ケーブルの管理
充電ポートはマグネット式の専用端子(ポゴピン)です。汎用のUSB-Cケーブルを直接挿すことはできません。
一度の充電で最大30時間録音可能とバッテリー持ちは非常に良いですが、万が一の充電切れに備え、専用ケーブルはなくさないよう管理する必要があります。
まとめ

Plaud Note Proを使って感じたのは、これが単なる「録音の手間を省くツール」にとどまらないということです。
専用ケースによる若干の厚みは考慮する必要がありますが、それを受け入れて余りあるメリットがあります。例えば以下のようなシーンです。
- 騒がしいカフェや風の吹く屋外でも、相手の言葉を逃さずキャッチするハードウェア性能。
- チャットAIにはできない、柔軟な編集と画像の統合を実現した優れたアプリUI。
- 複雑な技術的議論さえも「事象・原因・対策」へと因数分解してしまう推論AIの知性。
これらが組み合わさることで、ユーザーは「メモを取る・整理する」という作業から解放され、目の前の相手との対話や、より創造的な思考に100%のリソースを割くことができます。
特にiPhoneを利用している方にとっての通話録音問題に対する解決策でもあり、すべてのビジネスマンにとっての「時間」を生み出す投資でもあります。
Plaud Note Proは、ビジネスの速度と質を、一段階引き上げてくれる最先端のプロダクトと言えるでしょう。
