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【イベントレポート】盛り上がりを見せるスマートホーム市場。トッププレイヤーがリアルな市場感を語る暮らしのDXを実現するスマートホームの最新トレンド|LIVING TECHカンファレンス2025

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LIVIG TECK Conferense 2025

 年に一度、LIVING TECH協会が主催するLIVING TECHカンファレンスが、2025年12月10日(水)~12(金)に東京ビッグサイトで催された、建築・土木・不動産の最新技術展「JAPAN BUILD TOKYO」において、主催者のRX Japanとの初共催という形で実施いたしました。(開催概要はこちら

 LIVING TECHカンファレンスは「暮らしをテクノロジーで変える」「社会課題を解決する」「業界横断で新規事業を創出する」をテーマに掲げ、協会設立前の2017年から始まり、今回で第7回目を迎えました。

(過去のカンファレンス情報はこちら、レポート記事・アーカイブ動画はこちら

 2020年に協会を設立してからは、スマートホームに軸足を置きながら『暮らし領域のテクノロジー活用』による課題解決やDXを目指し、住宅業界をはじめとする、メーカー、小売・流通、サービス等、業界横断で取り組み議論するセッションを企画・実施しています。

 今回は、2025年8月のJAPAN BUILD OSAKAでは、スマートホームのサービス提供者とそれを採用した住宅プレイヤーが導入・採用のリアルを語り、大好評いただいたこともあり(レポート記事はこちら)、スマートホーム市場の盛り上がりをよりリアルにお伝えすべく、連携団体のConnectivity Standards Alliance日本支部代表の新貝氏にも企画協力をいただき、スマートホームのトッププレイヤーを招いてスマートホーム市場の当事者がリアルな手触り感を語る企画を中心に、過去の開催で一番スマートホームに特化したセッションを多く企画しました。本記事では、1日3セッション、3日間で全9セッションに関するレポートをお届けします。

目次

【セッション1】Matterで進化するスマートロックと近未来の「鍵」

 最初のテーマは、スマートホーム国内市場の中でも、活性化を見せているスマートロックですが、これまで日本のスマートロック市場は、独自の通信規格やハブが必要なシステムが乱立し、ユーザーにとっては導入のハードルが高く、メーカーにとっては開発・保守コストが重荷となっていました。特に、玄関ドアメーカー(YKK AP)や錠前メーカー(美和ロック)にとって、他社プラットフォームとの連携ごとに個別の開発を行うことは大きな負担でした。

 しかし、世界標準規格「Matter」の登場により、メーカーやプラットフォームの垣根を越え、異なるメーカーのデバイス同士が簡単に繋がるようになり、専用中継器が不要になったり、Matterに対応するだけで済むため、メーカーは「つなぐための開発」から解放され、本来の「製品品質(セキュリティや耐久性)」や「付加価値」の向上にリソースを集中できるようになり始めています。

 これにより、美和ロックは、物理的な鍵の安全性と耐久性を維持しつつ、デジタル技術との融合を推進。Matter対応により、より手軽に高セキュリティな環境を提供することを目指しています。 YKK APも玄関ドアそのものをスマート化するアプローチを始めており、最新技術を搭載した「スマートドア」を開発し、Matter対応によって、家中の照明や空調機器などと連動した「入室時の体験」全体を向上させようとしています。

 セッション後半では、今後の展望について議論が行われ、鍵が単なる「開け閉めする道具」から、「認証と連携の入り口」へと進化する未来が描かれました。例えば、帰宅時の解錠をトリガーに、照明がつき、エアコンが稼働し、カーテンが開くといった一連の動作が、Matterによってスムーズに実現されます。セキュリティのプロ(美和ロック)と開口部のプロ(YKK AP)が、共通規格のもとで連携しやすくなることで、日本の住宅業界におけるスマートホーム化の加速が期待されます。

🎤 登壇者

  • 田中俊一氏: 美和ロック 商品企画部 主任
  • 高長晶氏: YKK AP 住宅本部 住宅商品部 ネットワーク商品推進室

🎙️ モデレーター

  • 新貝文将氏:Connectivity Standards Alliance 日本支部代表/X-HEMISTRY CEO

📹 アーカイブ動画

アーカイブは非公開です

【セッション2】介護・見守りの課題を解決するスマートホーム活用最前線

 年々、高齢化問題や、介護・福祉業界の人材不足などの社会課題が深刻になってきています。当協会にも問い合わせが増えている分野でもあり、このセッションでは介護・福祉・見守り領域に関するテーマで講演を行いました。概念的な話より、実際ローンチされていて利用可能なサービスを中心に取りあげました。

 NTTデータがNatureと連携して取り組む高齢者向けパーソナルアシスタント「ボイスタ」。Amazon Echoを活用し、高齢者が声だけで家電操作や情報取得を行うことで、加齢による身体機能の低下により「諦めていたこと」を、音声操作により家電を操作したり情報を得たりすることで、自立支援が促され、高齢者のQOLの向上に寄与するアプローチを解説しました。これは、単に利用者のQOL向上だけでなく、介護職員の業務効率化にも寄与しています。

 また、スマートリモコン「Nature Remo」を活用した「緩やかな見守り」の事例も紹介され、外出先からの室温確認や、設定した室温になると自動で冷房を起動させる熱中症予防や、家族の視点では、家電の操作履歴を通じた安否確認など、プライバシーに配慮しつつ家族が安心できる機能があることが共有されました。

 三井住友海上火災保険は、昨年に損保業界で国内初のIoTサービスとなる「MS LifeConnect」をローンチ。家庭の防犯だけでなく、新たに導入するセンサー類を活用し、防犯だけでなく見守りへのサービス拡大についても紹介しました。

 見守りテック情報館の和田氏からは、自身の親の介護で活用した、センサーやスマートロックを紹介。「鍵をかけたか心配」という高齢者の不安を解消したり、徘徊の予兆を検知したりすることができ、介護する側・される側双方の精神的負担を軽減した「安心の創出」につながる事例を紹介しました。スマートホームは、親の介護だけでなく、高齢者の親を持つ世代にとっても、自分が高齢者になって見守られる立場になったときに慣れ親しんで使える状態になっていることも重要になっていきそうです。

 セッションの後半では、それぞれ立ち位置の異なる登壇者から、「今後の福祉・介護・見守りの課題」をテーマにディスカッションを行った中で、最も重要なのは、「在宅サービス」「遠隔見守り」というキーワードでした。実際、当協会にも、在宅介護事業者からの問い合わせや、障がい者の生活支援に関する相談も寄せられています。

 一般家庭での家事負担軽減や防犯活用などの用途で、スマートホームが単なる便利家電にとどまらず、介護・福祉領域におけるスマートホーム活用も今後活性化していくであろうという意見も多く、高齢者の尊厳を守り、地域包括ケアシステムを支える重要なインフラとなり得る可能性が示されました。

🎤 登壇者

  • 北村天志氏:Nature マーケティング
  • 齋藤毅氏:NTTデータ 第二金融事業本部しんきん事業部 テクニカルグレード
  • 平岩幸治氏:三井住友海上火災保険 ビジネスデザイン部 データ・リスクサイエンスチーム ディレクター
  • 和田亜希子氏:見守りテック情報館 見守りテックコーディネーター

🎙️ モデレーター

  • 長島功氏: LIVING TECH協会 事務局長/リノベる 経営企画部付

【セッション3】B2Cスマートホーム最前線:ユーザー視点で描く事業戦略

 セッション3では、B2B業界に対して、一般ユーザーの普及実態について知っていただく機会として、シャープ、SwitchBot、エディオンの3社をお招きし、「B2Cスマートホーム最前線」をテーマに、スペック競争ではなくユーザー視点に立ち、生活体験(UX)をどう向上させるか、そして事業としてどう成立させるかに焦点を置いて議論しました。

 シャープは、家電メーカーの中でも先駆けてAIとIoTを融合させた「AIoT」を提唱しています。家電がユーザーの生活パターンを学習し、ライフスタイルの変化に合わせて、洗濯機のコース提案、調理家電のメニュー提案などの機能が進化し、購入時がピークではなく、使い込むほどにユーザーに合わせて寄り添い、他社製品や住宅設備とも連動し、進化する家電を目指しています。また、高齢者の見守りや防災情報の発信、カーボンニュートラルに対応する省エネ制御といった社会課題に対し、社会インフラとして家電が担う役割についても紹介されました。

 SwitchBotはユーザー中心アプローチで急成長している企業です。「カーテンを開ける動作をなくして自動化したい」「自分の代わりに指ロボットがスイッチを押してくれる」といった、具体的で分かりやすく手軽にニーズに応える製品群で市場を拡大しています。サービス開始当初のユーザーは、ガジェット好きが中心でしたが、現在は一般家庭にも普及しつつあります。ユーザーの声(レビューやSNS)を製品開発に即座に反映させるスピード感が強みです。

 家電量販店のエディオンは、スマートホームの普及における「体験」の重要性について。ユーザー接点である売り場に、単に製品を並べるだけでなく、実際に複数の機器が連携して動く様子(シナリオ展示)を見せることで、ユーザーに「何が便利になるのか」を直感的に伝える工夫を行ったり、昨年、スマートアプリを発表し、訪問サポートや設定代行サービスを充実させ、デジタルリテラシーが高くない層でも導入できる環境を整えています。

 セッション後半では、2025年現在の、ユーザーの反応や反響をテーマにディスカッションしました。3社とも共通している考えは「便利さ」だけでなく「課題解決」が重要であるという点です。一定のユーザー評価があるものの、誰でも手軽にメリットを享受できるわけではなく、IoTに関して少なからず難しいことや課題がある中、特に「Matter」規格の普及により、メーカーの垣根を越えた連携が進むことで、ユーザーはより自由に製品を選べるようになり、企業は接続性の確保よりも「体験価値の創出」で競争する時代に入ると予測されました。

🎤 登壇者
  • 中田尋経氏:シャープ SAS事業本部 Smart Life事業統轄部 戦略推進部 部長
  • 北島祥氏:SWITCHBOT 国際本部 日本事業部 Business Development Manager & Product Manager
  • 長濵亮太氏:エディオン 商品統括部 NEXT商品開発部 マネージャー
🎙️ モデレーター
  • 新貝文将氏:Connectivity Standards Alliance 日本支部代表/X-HEMISTRY CEO
  • 織田未来氏:LIVING TECH協会事務局 ライフテックコーディネーター プレイド Project Accelerator

※アーカイブは非公開です

【セッション4】Z世代が切り拓く「自分らしい豊かさ」と未来の暮らし

 セッション4では、少し切り口を変え、従来の画一的な豊かさではなく、個人の多様な価値観をテクノロジーがいかに支えるかをテーマにディスカッションを行いました。

 日鉄興和不動産は、協会の事務局も兼ねており、社内シンクタンクのフューチャースタイル総研で、自社物件の購入者や入居者への深いユーザー調査等を行い、価値ある不動産の提供のために、今ではなく未来を見据え、逆算しながら自社単独ではできない業界横断の共創を積極的に行っています。今回は総研で調査したZ世代価値観が「画一的な豊かさ」から、個々の「ありたい姿」や「自分らしさ」を重視する方向へシフトしていると提示し、この前提に基づいて2者の視点を交えて議論しました。

 日建設計は、自社の淡路島のサテライトオフィスの事例を紹介。Z世代の社員が単なるリモートワークにとどまらず、地域コミュニティとの交流や多拠点居住という「体験」そのものを楽しみ、柔軟な働き方を通じて新たな繋がりを構築している現状を共有しました。一箇所に定住するのではなく、ライフステージや気分に合わせて拠点を変える柔軟な生き方は、テクノロジー(リモート会議、デジタルノマドツールなど)によって可能になっています。

 若手クリエイターや起業家の支援を行うASIBAは、支援を通じて見えるZ世代の姿を語りました。デジタルネイティブであるZ世代は、SNSやWebを通じて膨大な情報を処理し、自分の価値観に合うものを世界中から探し出すことに長けており。これもテクノロジーが、物理的な制約を超えて「同志」や「市場」と繋がるためのツールとして存在しているからです。そして、自分のアイデンティティを表現するために、住まいや空間をカスタマイズしたいという欲求が強く、固定的な間取りよりも、可変性が高く、デジタルで制御できる空間(照明や映像による演出など)が好まれるという傾向があり、ここでもデジタルなテクノロジーが表裏一体になっていると示唆しています。

 10年後の社会を見据え、テクノロジーは、その可変性や流動性を支えるインフラとして機能する必要がありますが、それ自体は目的ではなく手段であることと、そのテクノロジーを使う人(顧客・ユーザー)にはどんな特徴があって、どんな使われ方が良いのかという視点が重要になります。そのうえで、住宅供給側は「箱」を提供するだけでなく、住む人がその中で自由にライフスタイルを編集できる「余白」や「プラットフォーム」を提供すべきだという結論に至りました。

🎤 登壇者
  • 渋谷篤氏:日建設計 ハウジングシステムグループ 設計部長
  • 森原正希氏:一般社団法人ASIBA 共同代表
🎙️ モデレーター
  • 佐藤有希氏:日鉄興和不動産 フューチャースタイル総研室 チーフマネージャー

【セッション5】「守り」から「攻め」へ。スマートホームが変える住宅防犯の最前線

 セッション5では、「住まいの防犯を考える」をテーマに、テクノロジーを活用した次世代の防犯対策について議論が交わされました。

 まず最初に防犯アドバイザーの視点から、防犯の4原則「音・光・時間・人の目」が紹介され、特に侵入に5分以上かかれば7割の犯罪者が諦めるというデータに基づき、窓や玄関での「時間稼ぎ」がいかに重要かが強調されました。

 また、昨今の「闇バイト」等による凶悪事件を受け、単に記録するだけのカメラでは不十分であり、れまでの「入られないようにする」守り中心の防犯から、カメラ越しに声を掛けたり光で威嚇するなど「侵入を試みようとする時点で撃退する」攻める防犯の必要性も求められています。

 これに対しLIXILは、スマートロックによる無締まり防止や、センサーと連動したシャッター操作、在宅を装う照明制御など、IoT技術を駆使した解決策を紹介しました。LIXILもかねてからホームIoTに取り組む企業で、IoTを活用したソリューションを紹介しました。

 侵入原因の多くを占める「無締まり」に対し、オートロック機能付きのスマートロックや、施錠状態をスマホで確認・操作できるセンサーを導入することで、ヒューマンエラーを防ぐ。旅行中や帰宅が遅くなる際に、遠隔操作やタイマーで照明やテレビをオンオフし、人がいる気配を演出することでターゲットにされるのを防ぐ。不審者を検知したら自動でシャッターを閉めるなど、物理的な防御とデジタルの検知を連動させ、能動的に犯罪を予防する防犯が可能になります。

 と同時に、死角を作らない外構設計や、侵入されにくい窓の配置など、建築的な工夫とスマートホーム機器を組み合わせることが最強の防犯になることも住宅設計者の視点で紹介されました。新築時だけでなく、リフォームでも導入しやすい製品(後付けスマートロックなど)の普及が、日本の住宅の安全性の底上げに貢献していくことは確実でしょう。

 利便性だけでなく、物理的な防御とデジタル技術を融合させた「スマートに攻める防犯」が、これからの安心な住まいづくりのスタンダードになるという展望が示されました。

🎤 登壇者
  • 京師美佳氏:防犯アドバイザー 犯罪予知アナリスト
  • 岩井早瀬氏:LIXIL住宅研究所 商品部   部長 一級建築士
  • 神垣雅也氏:LIXIL Housing Technology デバイス事業部 IoT事業推進部 スマートマスター
🎙️ モデレーター
  • 倉林慶太氏:LIXIL Housing Technology デバイス事業部 IoT事業推進部 部長

【セッション6】住宅業界におけるスマートホーム普及の鍵は「人材育成」と「制度設計」

 2日目の最終セッションは、理事と当協会の参画企業計6社による「スマートホームの制度設計・公開検討会」と題し、普及に向けた課題と解決策を議論しました。

 代表理事の山下氏は、リノベーション×スマートホームを、理事の野村氏はHEMSサービスのAiSEGを、松井氏は建築士や電気工事士の資格を持ちながらスマートインターフォンの企画・施工・設定までワンストップで提供、中畑氏はヨーロッパの企画KNXやビルOSに精通するインテグレーター、松本氏は建築士でありながら、住宅供給事業者としての商品開発や、フランチャイズで工務店へのコンサルティングを行う立ち位置、濱崎氏は、ユーザーへの設定サービスを提供しながら、IT整備士の資格を運営しています。

 日本のスマートホーム認知度は7割に達する一方、普及率は約13%と米国の3分の1程度に留まっています。家事負担の軽減、防犯・見守り、置き配や省エネなど、様々な社会課題の解決ソリューションになるスマートホームですが、普及が加速しない主な障壁は「価値の伝えにくさ」と「設定・設置の複雑さ」の2点が大きいと考えています。技術面では、世界標準規格「Matter」と国内規格「ECHONET Lite」の共存が現実解であるとの見解で一致。一方で、現場の課題として、建築士や施工管理者が必ずしも最新のIoT技術やネットワークに精通していない現状が指摘されました。様々な業界でもそうですが、バリューチェーンの中で分断がたくさんあり、その分断によって情報が止まったり抜け落ちたりする課題に対して、求められる役割が、コーディネート、技術的支援、トラブルシューティングもできる「インテグレーター」になってきます。

 また、議論の核心として、インテリアコーディネーターのように、建築とITの橋渡しを行う「スマートホームコーディネーター」といった専門職や資格制度の必要性も提言されました。「電気がつかない」「ネットが切れた」といった引き渡し後のトラブルに対し、誰が(建築会社か、機器メーカーか、通信会社か)責任を持って対応するか、その切り分けとサポート体制の構築ができないと、安心してお客様に勧めたり、自社物件に標準化したりするには住宅提供事業者としても不安が残ります。一社単独では解決できない課題(人材育成、サポート体制)に対し、リビングテック協会のような業界団体が中心となり、標準的なガイドラインや資格認定制度を作っていこうと、制度検定員会を立ち上げることになりました。課題を解決し、それぞれのステークホルダーにとっても価値に変えていく。これにより、消費者が安心してスマートホームを導入できる土壌を作ることを目指します。

🎤 登壇者
  • 松井伊織氏:DOORCOM 代表取締役社長 一級電気通信施工管理技士/二級建築士/第二種電気工事士
  • 中畑隆拓氏:スマートライト 代表取締役/一般社団法人日本KNX協会 理事(事務局)/KNXトレーニング講師/第二種電気工事士
  • 松本啓司氏:JIBUN HAUS.商品開発 顧問/BARCO FARO 代表取締役
  • 濱崎慎一氏:日本PCサービス 取締役 BPOソリューション事業本部担当/IT整備士協会 理事
🎙️ モデレーター
  • 山下智弘氏:LIVING TECH協会 代表理事/リノベる 代表取締役社長
  • 野村仁志氏:LIVING TECH協会 理事/パナソニック エレクトリックワークス社 エネルギー・loTソリューションセンター ビジネス推進室 室長

【セッション7】世界最先端「AIホーム」の衝撃と日本の現在地

 3日目の1つ目のセッションは、世界最大級のテクノロジー見本市「CES(米国)」と世界最大級の家電見本市「IFA(ドイツ)」の現地視察レポートを基に、「世界のトレンドや当たり前を知る」ことが日本のスマートホーム普及に向けたポイントの一つでもあるという観点でセッションを行いました。

 新貝氏は、十数年来、どちらの展示会も「スマートホーム視点で」定点観測されており、数年前からCES報告会、IFA報告会を主催されています。日本のスマートホーム普及率が米国の約10年前の水準にある現状を指摘しました。対照的に、欧米や中国、タイなどの家電量販店では、スマートホーム売場が、家電量販店の一等地に当たり前にあることを現地の写真や映像と共に紹介しました。また、従来の「スマホで操作する」段階は終わり、「AIがユーザーの行動や好みを学習し、先回りして制御する」段階に入っていることにも触れ、グローバルを牽引するSAMSUNGの家電の事例や、Matterの浸透とハードウェアのコモディティ化について紹介しました。

 日本市場は「ガラパゴス化」のリスクにあります。しかし、AIとMatterの普及過程にある今現在は、日本メーカーの家電や住宅設備が世界標準に接続できるチャンスでもあります。世界トレンドを直視し、単なる機能競争ではなく「体験価値」の提供へシフトする必要性について、グローバルの動きをウォッチして取り組むプレイヤーが増えることで、日本のスマートホーム普及促進が実現します。

 新貝氏は、常々、トレンドをウォッチし続けることが重要と説いており、協会事務局の長島氏も、CESとIFAの現地視察を通じて、頭では理解していたつもりでも、市場普及の実際を感じることで海外との差をリアルに感じたとコメントしました。日本の普及の遅れは逆を返すと、ビジネスとしては「市場としてのポテンシャルがある」ということと、まだ解決できていない課題が解決できる余地があること、そしてそれによりもっと日本の住宅価値や生活の豊かさを上げられるということでもあるので、引き続き協会としても情報発信をしていきたいと考えています。

🎤 登壇者
  • 新貝文将氏:Connectivity Standards Alliance 日本支部代表/X-HEMISTRY CEO
🎙️ モデレーター
  • 長島功氏:LIVING TECH協会 事務局長/リノベる 経営企画部付

※アーカイブ動画はありません

【セッション8】ジェンダーフラット時代の家づくり|家づくりをユーザー起点で考える

 RoomClipは、ユーザー投稿数600万枚強を誇る日本最大級の住生活領域特化型ソーシャルプラットフォームで、協会設立当初からメディアパートナーとしてご一緒いただいています。当協会ではユーザー視点を重視しており、カンファレンスではいくつかのセッションをユーザー視点の切り口で企画しています。

 RoomClip住文化研究所は、まさにユーザー投稿のコメントやタグなどの実例データ、ユーザーの検索ワードなどの行動データなどの分析を行っており、その視点でこのセッションはRoomClip企画として、「男女のフラット化とこれからの住まい」をテーマに、ジェンダーロール(性別役割分担)の変化が住宅設計や暮らし方にどのような影響を与えているか、そしてテクノロジーがどう貢献できるかディスカッションを行いました。

 まずはRoomClipから、家づくりのトレンドとして、共働き世帯の増加に伴い、「設備は夫、内装は妻」といった意思決定における男女差がなくなってきていることや、家族団らんと同時に「一人になれる時間・空間(自分時間)」を求める傾向が強まっていることが示されました。

 内装のトレンドとしては、緩やかに仕切られた個人スペース「ヌック(こもり感のある小空間)」の人気や、「洗う・干す・畳む」を一箇所で完結させ、時短を実現する「ランドリールーム」について共有されました。

 特にユーザー視点では、ライフテックコーディネーターの織田氏は、自宅の中でスマートホームを活用することで家族間の干渉を見守りに変えて活用していることを紹介しました。スマートスピーカーによる子供への声掛けで摩擦を減らす事例や、先ほどのランドリールームの事例に重ねて、スマートロックやセンサーなどのテクノロジー活用し、「鍵閉めた?」「電気消した?」といった些細な確認によるストレス削減や、見えない家事の可視化による精神的・身体的余裕を作ることで、豊かな暮らしにつながっているという事例が紹介されました。

 荒津氏は、家事や育児は「2人でやる共同作業であり、どちらもできる」という前提のもと、子供たちをどう見守り、どう暮らしていくかというベースの価値観を夫婦で共有して家づくりを行った自身の経験を紹介。子供たちの成長など将来の不確定要素が多かったため、あえて個室をたくさん作ることは避けた代わりに「オープンなエリア」と「クローズなエリア」を設け、必要に応じてスマートホーム機器などで空間を区切りながら使えるような、柔軟性の高い間取りにしたそうです。

 植松氏は建築家の視点として、施主のニーズの実例を交えながら、自分らしさを追求する考え方だけでなく、人生100年時代を見据えた住まい自体のあり方について言及。高齢単身者の増加という社会課題に対して、スマートロックなどのテクノロジーで安心を担保しつつ、社会と繋がる住まい方が未来の最適解であると展望しました。

 長谷工アネシスの尾身氏は、当協会のメディアパートナー「くらしちゃん」の運営をしており、長谷工グループのマンションで様々なユーザー企画を行っています。その活動の中で、住まいづくりには、建物(ハード)を提供するだけでなく、家事代行や整理収納などのサービス(ソフト)を絡めることで、暮らしに時間や空間の「余白」を作っていくことが重要だと感じているそうです。

 スマートホームは家の中で使われるテクノロジーですが、これからの住まいの最適解 は住まう人の「その人らしさ(何が好きか)」をどう表現し、形にするかが重要です。テクノロジーは、個人の好きをサポートし、家族間や社会との距離感を適切に調整するツールとして活用されるべきであり、それがジェンダーフラット時代の豊かな暮らしに繋がると結論づけられました。

🎤 登壇者
  • 植松千明氏:植松千明建築事務所 主宰/一級建築士
  • 織田未来氏:LIVING TECH協会事務局/ライフテックコーディネーター/プレイド Project Accelerator
  • 荒津桂氏:ルームクリップ RoomClip住文化研究所 研究員
  • 尾身慎一郎氏:長谷工アネシス 価値創生部門 ICT活用推進部 チーフ
🎙️ モデレーター
  • 竹内優: ルームクリップ マーケター/RoomClip住文化研究所研究員

【セッション9】世界標準規格「Matter」が変えるスマートホームの常識と未来

 カンファレンスの最後を締めくくるセッションは、国内でスマートホーム市場を牽引する4名が登場、「グローバル標準規格Matter普及の先にある暮らし」をテーマに、Matterがもたらす開発・ビジネス面の変革と、ユーザーメリットについて深掘りされました。

 当協会が2025年12月にプレスリリースした取材記事でも解説していますが、これまでスマートホーム機器はメーカーごとに通信規格やアプリがバラバラで、ユーザーは「どれとどれが繋がるか」を調べ、複数のアプリを使い分ける必要がありました。しかし、これらの機器の共通言語になる「Matter」は、Google, Apple, Amazonなどが主導する世界共通規格で、Matterロゴがついている製品なら、メーカー問わず相互に接続でき、ユーザーは好きなアプリ(プラットフォーム)から操作することができるようになります。

 パネリストの3社は、Matter対応デバイスを開発するメーカーの立場でもあります。美和ロックは、開発に関するコストやリソースの効率化ができることで、本来のハードウェア品質で勝負できるとメリットを強調。アクセルラボは、B2B視点から、多様なデバイスを単一アプリで管理できる利便性と、市場にある多種多様な製品から自由に選んで提案できるようになることでのユーザーメリットを挙げ、mui Labは、通信技術を意識させないインターフェース作りに注力できる点を評価しました。

 Matterによるメリットは、提供事業者だけではなく、ユーザーから見ても、自分で購入してきたMatter製品を自由につなげることができるので、従来のシステム分断で使いにくいものから、自由度が高くサービスのメリットを享受しやすくなります。

 議論の後半では、Matterが基盤となり、接続性がコモディティ化することで、今後はAIを活用した体験価値やエネルギー管理(EV連携)など、付加価値での競争「AIホーム」へシフトしていく未来が示されました。Matterの普及により、「誰もが使える社会インフラ」になっていきます。日本企業もこの波に乗り遅れることなく、共通規格の上で独自の付加価値を競い合うフェーズに入っています。これからもスマートホームやMatterの進化に期待したいと思います。

🎤 登壇者
  • 青木継孝氏:アクセルラボ 取締役 CTO
  • 木下琢生氏:美和ロック 取締役 商品開発本部長
  • 佐藤宗彦氏:mui Lab CXO (Chief Experience Officer)​
🎙️ モデレーター
  • 新貝文将氏:Connectivity Standards Alliance 日本支部代表/X-HEMISTRY CEO

 最終セミナーの後は同会場で「スマートホーム交流会」が開催されました。スマートホームに取り組むトッププレイヤー企業との意見交換が活発に行われ、LIVING TECHカンファレンス2025の幕を閉じました。

【展示エリア】テクノロジーが暮らしをサポートしてくれる|スマートホームプレイヤーの展示

JAPAN BUILD TOKYOは、国内展示会で最大級のスマートホームプレイヤーが出展する展示会です。当協会の参画企業も多く出展されています。

三菱地所|HOMETACT

B2Bの総合スマートホームサービスであるHOMETACTは今回ひときわ存在感を放つブースでにぎわっていました。管理会社大手のJPMCとの業務提携により全国に導入物件が拡大し、新たに顔認証ソリューションAkuvox(DOORCOM)との連携や、Panasonicのスマートスイッチコントロールのリンクプラスとの連携など、サービスが順次拡張しています。

年々連携デバイスが増えています。

ブースではデバイス類の連携体験のデモンストレーションが。

また、出展社セミナーも開催され、立ち見が出るほどの聴講者の中、JPMCの導入事例の紹介などが紹介されました。

Ring(Amazon)

スマートドアベル、スマートカメラソリューションのRingのブースも賑わっていました。従来のバッテリーモデルに加え、PoEモデルも出てきており、一般家庭のみならず、法人ニーズも拡大しているそうです。

LifeSmart

B2BスマートホームソリューションのLifeSmartは、世界80か国以上、400万人を超えるユーザーを誇るグローバルを代表するスマートホームメーカーです。2024年に日本オフィスも開設され、住宅だけでなく、ホテルなどにも導入され、昨年発表された意匠性の高いスマートスイッチパネルは組み合わせの自由度も高く、日本向けにもローカライズされている注目のアイテムです。

美和ロック/ACCEL LAB

住宅の鍵で国内シェアno.1の美和ロックは、スマートキーの開発に力を入れています。玄関の鍵だけでなく、最近では置き配に対応するスマートエントランスソリューションのココ配も展開しています。このブースではアクセルラボのSpaceCoreとの合同展示コーナーも。HOMETACTも連携しており、日本の住宅のスマート化に力を入れています。

エナスピレーション

スマートロックのエナスピレーションも出展していました。比較的ローコストで月額無料、API連携無料などの戦略で、住宅のみならず、オフィスやホテルなどの導入も増えています。

チャットロック

最近はスマートロックの出展が盛り上がっており、チャットロックも夏の大阪展に続き東京展にも初出展していました。2018年設立と業界では新しい会社ですが、精力的で利便性の高い製品開発をされています。

Akuvox/akubela

Akuvoxも大阪展、東京展とも出展しているスマートインターフォンを軸にしたスマートソリューションです。2025年に日本事務所を開設し、スマートインターホンを軸にしたスマートホームakubelaも展開しています。

三井住友海上火災保険|MS LifeConnect

2024年のスマートホーム産業カオスマップの注目トピックとして取り上げた、損保業界日本初のIoTプラットフォームサービス「MS LifeConnect」は、事後対応の保険サービスだけでなく、事前に予防するセキュリティソリューションですが、ローンチから1年で、住宅以外のニーズも拡大し、この春から新たにセンサーを投入し、見守り範囲の拡大をしています。事件・事故が起きてからではなく起きる前にテクノロジーを活用して豊かな暮らしをサポートしてくれます。

まとめ:プレイヤーが語るリアルな日本のスマートホームの現在地

2025年から、イベントの後援団体として、JAPAN BUILDで初のLIVING TECHカンファレンスを主催者のRX Japan様と共催で開催いたしました。JAPAN BUILDは、毎年8月に大阪、12月に東京で行われる土木・建築・不動産業界向けの国内最大級の展示会です。

以前から、「不動産テックEXPO」や「スマートハウスEXPO」などの企画に取り組まれている展示会で、LIVING TECH協会や、特別会員として連携している不動産テック協会の会員企業も多く出展している展示会です。

LIVING TECH協会が発足した2020年ごろは、まだ「スマートハウス」と「スマートホーム」が別のもので、省エネやエネマネを得意とするHEMSを中心とした「スマートハウス」のほうが先行していました。「スマートホーム」は似ていますが、エネマネやHEMSが中心ではなく、家電やデバイス、住宅設備を連携しながら、ライフスタイルに寄り添い、課題を解決しながらより便利で快適な暮らしを実現してくれるソリューションです。

海外ではこれらのスマートホームは、スマートホーム産業カオスマップで示しているように、「入退管理」「ホームオートメーション」「通信」「損保」「高級住宅向け」「一般住宅向け」など様々な切り口でプライヤーが多く普及しています。

日本でもスマートホームの全体像や提供価値、解決できる課題やユースケースなどの情報発信を継続的に行い、取り組む事業者を増やし、それにより物件価値向上、入居者利便性向上、社会課題や生活課題の解決を促進していきたいと考えています。

主催者様にもご提案し、来年のJAPAN BUILDでは、「スマートハウスEXPO」改め「スマートホームEXPO」として、展示エリアが設けられます。LIVING TECH協会でも、大阪展、東京展ともに、カンファレンスイベントの開催を予定しておりますので、今後も是非、継続的にご参加いただければ幸いです。

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