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【イベントレポート】福祉現場をテクノロジーでアップデート〜介護福祉ワーキンググループ勉強会レポート~

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2026年8月21日に、LIXILさんの大崎オフィスにて、福祉現場における最新テクノロジーの活用をテーマとした勉強会を開催しました。その模様をレポートします。

目次

1.開催の背景

本年度から、当協会では、参画企業様が主体となり、有志で集まり活動するワーキンググループを立ち上げています。5つあるワーキンググループのうち、「介護・福祉ワーキンググループ」に参画している銀座堂社会福祉法人の藤川さんの起案で開催したものです。

福祉の現場では、慢性的な人手不足やスタッフの業務負担の増加が長年の課題となっています。日々のケアに加え、記録業務や見守りなど、多岐にわたる業務に追われ、「利用者とじっくり向き合う時間が足りない」といった声も多く聞かれます。

こうした状況を打破し、支援者と利用者の双方にとってより良い環境を作るための手段として「テクノロジーの力」が活用できないかといった想いから、実践している方たちのリアルな話を踏まえ、「福祉利用者」と「利用者の支援者」の立場と考えをより理解できることを目的として企画されました。

企画者の藤川さんは、「社会福祉士の存在がIoT分野での新製品開発の重要な役割を持つことを望んでいます。なぜなら、介護・福祉の製品開発においては「福祉利用者」だけでなく「利用者の支援者」の理解と橋渡しが必要になってくるからです。」と会の冒頭でお話しされました。

当協会も、Valueの中に「ユーザー視点」という言葉を掲げています。売り手目線になりがちですが、ユーザーに受け入れられるためにはどうあるべきか、ユーザーのどんな課題をどんな方法で解決するかという視点で企画された勉強会です。

※社会福祉士とは
専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者」とされています。

後段の河村氏プレゼン資料より引用

2.「福祉の生活支援業務とIoT機器の活用」

1つ目のセッションは、新潟県地域おこし協力隊丸山雄也氏による「難病とテクノロジーのある暮らし」の支援・実践の報告でした。

丸山さんは、ユニバーサルデザインフォントの営業の仕事をしたのち、青年海外協力隊での海外活動から帰国した際、ICT支援が必要な人に届いていないという問題意識から、新潟県庁が募集した難病患者向けICT支援の地域おこし協力隊に応募。委嘱を受け2023年11月に着任されました。「難病患者とその家族の課題解決」のために、身近なテクノロジー(スマートスピーカーとスマートリモコン)を活用して、福祉視点のサポートを行う活動に取り組まれています。この活動のひとつが、Amazonのニュースブログでも取り上げられています。

丸山氏のプレゼン資料より引用

様々な自治体において、「障害者ICTサポートセンター」という部門が存在するそうですが、自治体ごとにスタンスや方針が異なり、スマートホームに詳しくなかったり、知っていても設置設定サービスの存在を知らない人が多いので、こういった課題解決の選択肢として想起されない状態だそうです。

丸山氏のプレゼン資料より引用

全国でも稀な、スマートホームを活用した難病支援。丸山氏は、上記のスライドにあるような仕組みを作り、問い合わせがあった地域住民の方にヒアリングを行い、①Wi-Fi環境がある、②スマホをお持ちであることを前提に、スマートスピーカーとスマートリモコンを使ってそれぞれのお宅の課題の対応策を考え、提案、設定しました。

スマートスピーカーやスマートリモコンを使って支援した結果、使い慣れないという方も一部いたようですが、難病を抱えたご本人が自分でできることが増え、ご家族も負担が減るという効果が、複数の症例で認められたそうで、1カ月の無料貸出期間を経て、22世帯中16世帯がご自身で機器を購入し、継続利用した方の中には、ご自身でデバイスを買い足してグレードアップされているケースもあるそうです。

丸山氏のプレゼン資料よりAI生成によりまとめ

なお、症状が進むと身体の自由が利かなくなる難病患者さんは、手が動かせなくなってタブレットやスマホが使えなくなったときに、ご自身の意思を周りの人に伝えるため、「意思伝達装置」という、目線でカーソルを動かしてボタンで入力する機器の導入を医者に勧められるそうです。しかし、意思伝達装置を導入するのを嫌がって意思疎通を拒絶してしまう人が多く、ご家族が本人と連絡取れないままお亡くなりになるケースもあるそうです。そこで、スマートホーム機器に慣れておくことで、この導入のハードルを下げる効果もあるのではないかと丸山氏は考えています。

丸山氏のプレゼン資料より引用

丸山氏は当初、Wi-Fiを自宅にひいていなかったり、スマホなどのITスキルの不足など、技術的ハードルが主な障壁と想定していたそうですが、実際には多くの方がWi-Fi・スマホを既に活用しており、機器の導入に対する課題はここではないことに気づいたそうです。プロジェクトに取り組んできた結果、見えてきた最大の障壁は、患者さんご自身の「自分にはまだ早い」「自分には関係ない」という心理的ハードルであることが判明したそうです。

丸山氏は、この課題に対し、同じ境遇の当事者による具体的な活用事例の発信が有効であろうと仮説を立て、noteで「難病とテクノロジーのある暮らし」というメディアを立ち上げ、いくつかの事例を記事として公開しました。すると、群馬県在住のALS患者(60代男性)がnote記事を見て機器導入を決めたと問い合わせがあったそうです。丸山氏はこれを「抽象的な情報を現実的な選択肢に変える」効果と表現し、これからもnoteで情報発信していく予定とのこと。

また、スマートスピーカーなどのスマートホーム機器や、それらを操作するiPadなどは、各自治体が設けている「日常生活用具給付等事業」助成金の対象にはなっていない現実もあります。この点は、先日、配信した「知的障害者の自立促進と適切な支援のためのスマートホーム技術活用プロジェクト」のプレスリリース内にもありますが、スマートホーム機器やサービスに対する補助金や助成金の獲得に向けて、当協会も活動していきたいと考えています。

丸山氏のプレゼン資料より引用

3.「福祉の相談支援業務と生成AIの協業」

続いては、新潟県社会福祉士会の河村大介氏が2026年2月に実施した「生成AIとソーシャルワーカーの支援比較検証」について報告されました。この講義は、「生成AIは、社会福祉士の支援をどこまで代替できるのか?をテーマに、生成AIの基本的な仕組みやリスクを押さえた上でAIの可能性と限界、人が担うべき役割を整理しながらこれからの支援のかたちを参加者とともに考える体験型イベントとして開催されました。

参照:「スキルアップラジオ3.0 ChatGPT×SocialWorker」研修・講座の報告

河村氏は12年福祉業界に従事。うち8年は特別養護老人ホームで生活相談員として勤務した経験を経てIT業界に転職。現在は新潟県社会福祉士会の法人研修班で生成AIリテラシー研修を企画・運営されています。

長く福祉業界の現場にいた経験から、福祉業界では、本来きちんと管理すべき、過去の病歴などの要配慮個人情報を含む個人情報の取り扱いが杜撰な実態があるそうです。そこに、最新の情報技術が介入するとリテラシーのタガが外れるリスクがあるため、当初は情報リテラシー研修を企画されていたそうなのですが、生成AIの台頭により方針を転換し、「生成AIはソーシャルワーカーの支援を代替し得るか」をテーマとした検証企画を立ち上げました。

事例生成AIにはGeminiのGems、回答AIにはChatGPTのGPTsを使用し、それぞれ別のカスタム指示で構築しました。事例生成AIには年度別社会問題リスト・職種リスト・感情リスト・隠された欲求リストをPDFで持たせ、リアルな架空事例を生成できるよう設計されました。回答AIには「大阪のおばちゃん的な40代女性」の人格を持たせ、制度中心ではなく人に寄り添う支援を生成させる方針として検証を行いました。

河村氏のプレゼン資料をもとに生成AIでまとめ

この事例生成AIが作った事例「8050問題(※)」で、75歳の父(元建築士・仙骨部にできものあり)と46歳の引きこもりの息子(約20年間就労なし・父の年金に依存)という家庭が事例サンプルとなりました。

この事例に対して、回答AIと、社会福祉士4名がそれぞれこの同一事例に対して支援計画を立て、事例生成AIがゲームマスターとして4か月ごと3ターン(計1年)の経過をシミュレートして検証が行われました。

※8050問題(はちまるごーまる問題)
80代の親が、無職やひきこもり状態で自立できない50代の子どもの生活や経済面を支えている状況を指す社会問題のこと。

それぞれの支援計画も特徴が現れました、回答AIは医療・家計リスクを優先し制度を次々と合理的な介入方針をとったものの、この介入により息子の役割喪失による無気力化や孤立リスクの課題が残る結果となりました。一方、社会福祉士チームは家族関係にどう入っていくかという視点で、情報収集・多職種連携から入ったが、息子に、大勢で干渉されたと受け取られ拒絶が強まり、解決の難易度が高まりましたが、その後、直接訪問から手紙・メールで関係性を再構築することで、関係値を回復。2か月後に息子から相談がくる形で介入でき、最終的に息子の今までの父親への介護姿勢を肯定することで、息子の自己効力感が回復し社会参加意欲まで生まれる結果となりました。

河村氏のプレゼン資料より引用

生成AIは日々進化しており、回答AIが当初は人間味のある回答を生成していたのですが、GPT-4oからGPT-5へのモデルチェンジにより回答傾向が大きく変わり、「性能向上が人への寄り添いを意味しない」と河村氏は指摘しました。現時点での評価としては、生成AIは課題の洗い出しや見落とし防止に強みがある一方、関係性構築や感情的介入は人の領域であるとし、AIを「相棒」として共存させることが有効であろうと、この検証では結論づけています。ただし、実際のケースへの適用には要配慮個人情報の問題があり、組織レベルでの情報入力ルール整備が必要であること、福祉組織のITシステム導入知見の薄さが活用の障壁になっていることも課題として挙げられました。

河村氏のプレゼン資料より引用

4.まとめ

今回は、「介護・福祉ワーキンググループ」の参画企業を対象に、上記の勉強会を行いました。まだまだ知らない人たちや業界に向けて、知ってもらうことで視野を広げ、課題解決の「選択肢」を広げることができたり、解決方法や施策に関して、違う視点でのヒントを得ることが可能となります。

本年度、協会とRoomClipでスマートホームの利用実態を共同調査した結果、スマートホームの利用率は約15%となり、キャズム超え目前となってきていますが、まだまだ福祉利用の視点での認知や利用実態は進んでいません。今後も、ワーキンググループの活動などを通じて、情報発信とプロジェクトに関わる機会を増やしていきたいと考えています。異業種と組むからこそ見える視点や解決できないとされる課題を、スマートホームやテクノロジーを活用し、解決に向けてトライしていく環境を引き続き提供していきたいと思います。

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